湘南連句公開座談会 柏餅の巻


 5月14日(土)午後、連句公開座談会が、今年もはじまりました。「六曲一双」柏餅の巻。場所は湘南キャンパスの教室です。  選者は例年通り、文芸創作学科の俳人・長谷川櫂先生、小説家・辻原登先生、そしてゲストとしてお招きしている歌人・小島ゆかり先生のお三方がつとめられます。それぞれが席に着かれると、僕をふくめて参加者はみな少し緊張したよう。

 本会では、一般的な全三十六句形式の「歌仙」ではなく、長谷川先生の発案された「六曲一双」という形式で、全十二句を巻いてゆきます。 「発句」を長谷川先生、次に「脇」を小島先生、そして「第三」を辻原先生が詠まれました。 それから先は参加者の句が続きます。選者である先生方が、参加者の詠んだ数十の句から約二、三句吟味せられ、スクリーンの上に映し出されます。「どの句が良いか、どの句を前の句につけるか」と、マイクを回して、お三方、熱く話し合われます。


 表六句(前半)は、長谷川先生の「国難や一の頼みの柏餅」にはじまり、時世をうつしたものが目立ちます。 そんな中、参加者の一人だった、文芸創作学科の室井光広先生が大活躍。明るくないイメージの第三句に、第四句目を柔いユーモアでもって受け止められます。そして、第六句にも。学生の詠んだ第五句「月見酒自棄になっても職はなく」に、先生は「アリギリスという道もありなん」

 裏六句(後半)は一転、空気がガラリと変わります。「夢を見てふと気が付けば秋ふかし」先生方もとても気に入られます。 夢から覚めて、続く、笑いに満ちた恋の句二つに、場は一気に朗らかに。そして産まれた子猫が懐いたかと思うと、 「念願の一姫二太郎初桜」なんてめでたい。 挙句に「山里に響くウグイスの声」 この裏六句から表六句を振り返って見ますと、苦難から解放へと、全体がまるで一つの物語です。小島先生をはじめ、会場は、なんとも言えない快さに包まれました。 「もっと続けたい。十二句じゃ足りない」と、辻原先生も途中、こうおっしゃられたほど盛り上がったこの会は、ですがこれ以上ない、大河的ともいえる結末を迎えたのではないでしょうか。


 不思議なもので、連句は、誰がこうしようと意図したわけでもないのに、その時その場限りの特別な流れが生まれるようです。

 最後に、先生方が総評をされました。 その時先生方がおっしゃられたことが、実は今、僕がこうして書いている文章のほとんどのもとになっています。ただ感動のままに書いてきました。 中でも「(始まりと終わりが)繋がったね」という辻原先生の一言。僕は、そこで柏餅の巻一連の物語に気付かされ、あっ、と声を上げたのでした。


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