湘南連句公開座談会 さ牡鹿の巻

連句公開座談会も今年で七回目を迎えました。この会は、「座の文芸」を実際に体験できるイベントです。文芸創作学科教授の長谷川櫂先生、同じく学科教授の辻原登先生、毎年ゲストにお招きしている歌人の小島ゆかり氏の詠んだ発句(第一句)、脇(第二句)、第三に続く残りの九句を、来場者が投句して完成させていきます。
天候はあいにくの曇りでしたが、例年を超える100人近くの方が来場されました。一般の方ももちろんですが、今回は特に学生の来場者が多かったように感じます。
開会時間になり、選者の三人の先生が席に着かれました。まず辻原登先生が開会の挨拶をされ、続いて長谷川先生からこの句会の説明がありました。

連句とは言わば「言葉の掛け合い」であり、形式は歌仙(連句の最もオーソドックスな形式。全三十六句を巻く)というものが主流だが、時間の関係でこの会では「六曲一双」を作ります。小島氏の発句と辻原先生の脇には互いの著作の内容が盛り込まれており、挨拶の意味合いもこもっています、等の解説が終わると、さっそく来場者は四句目以降の作成に入ることになります。
来場者の投句は一つに纏められ、まず長谷川先生が大まかに候補を絞ります。そこから登壇者の三人が意見を戦わせ、時には来場者の意見も参考にしながら一句を選んでいく、という形で、会は進行していきました。
長谷川先生の第三句「強運の小麦相場で財を為し」に付く四句目には「昼の休みに皇居一周」が選ばれ、第五句は「スカイツリー借景にしておでん酒」と続きます。ここまで男性をイメージさせるような句が続きましたが、第六句「就活やめて婚活をせん」でイメージが大きく切り替わります。この切り替わりが良い、とおっしゃったのは小島氏でした。こうして、表の六句が完成しました。

表六句で一般来場者の句が選ばれたのとは対照的に、裏六句は学生やOBの句が多く選ばれることとなりました。九句目「絡新婦(じょろうぐも)愛し肌(はだえ)に浮く刺青」は学生の作品で、元は少し違う形でしたが、三氏の添削を受けて選ばれることになった珍しい例です。全体的に和のイメージを喚起させる句がほとんどの中、挙句(第十二句)「トルストイ読む春の放課後」はインパクトがあり、辻原先生は「ここでトルストイが出てきたのは嬉しい」と喜ばれていました。
最後に辻原先生が全体の講評を行い、長谷川先生の挨拶を以て閉会となりました。普段なかなか触れることができない「連句」という文芸の楽しみを存分に味わえる、貴重な体験だったと思います。

「六曲一双」さ牡鹿の巻
| さ牡鹿の眼のうるむ闇の奥 | 秋 |
| 父の鞄に満月入れぬ | 秋 |
| 強運の小麦相場で財を為し | 雑 |
| 昼の休みに皇居一周 | 雑 |
| スカイツリー借景にしておでん酒 | 冬 |
| 就活やめて婚活をせん | 雑 |
| ふるさとの幼なじみが父になり | 雑 |
| 箪笥から出す勝負の浴衣 | 夏恋 |
| 絡新婦愛し肌に浮く刺青 | 雑恋 |
| たそがれどきの雲流れゆく | 雑 |
| 人ギライとなりのサクラただみして | 春花 |
| トルストイ読む春の放課後 | 春 |
- 記事作成:宮瀬昌唯(文芸創作学科 3年)
- 写真撮影:豊島尚樹(文芸創作学科 2年)