湘南連句公開座談会 夕顔の巻
2008年10月11日、連句会当日の朝は、今年も雨が降っていた。
幸い準備開始の11時前には雨は上がってくれた。しかし大変蒸し暑い。もう10月だというのに、会場で使う長机や椅子を運んでいると、汗が頬を流れ落ちる。
今回、私は連句会実行委員の委員長という大役を引き受けた。人を引っ張っていく役割など、初めての経験だ。なりふり構わず全力でやった、でもうまくいかない、当たり前だ。連句会スタートの午後1時半になっても、準備が万全整っているのかどうか確信が持てない。それでも、来場者72名を抱え込んだ座は始動するのだ。
東海大学湘南連句座談会は、去年から全12句の新形式の連句「六曲一双」を来場者の方に実作してもらい、好評を頂いている。
東海大学文学部文芸創作学科の辻原登教授と長谷川櫂教授、そして特別ゲスト小島ゆかり氏の詠んだ発句、脇、第三に続けて、残りの9句を会場で巻いてもらうのだ。
よい句を作るには、普段の生活でふと目に付いたもの・ことを、心の引き出しに仕舞って、暖めておくといいようだ。当日の2、3日前、4人の日本人がノーベル賞をとった。それを第7句目の雑の句で、「素粒子」や「ノーベル賞」といった言葉で詠み込む方が多かった。
私はというと、ノーベル賞のことをその日その文字を見るまですっかり忘れていたのである。あの日あの時に、すっとこういった言葉が出てくる方々にほとほと感心し、自分の書いた拙い句を思い出しては、赤面していた次第。
そして時は進み、窓の外が暗くなり始めた午後4時頃。ついに最終の第12句まで到達した。春の句である。
私はこの最終句だけは、自信を持って投句することができた。私は司会を務めていたのだが、こそこそと投句していたのである。
春立ち去りて次の足音
今日の連句会が終わっても、また来年の連句会が待っている。また、自分が卒業しても、後輩たち、そして新入生が連句会実行委員会を引き継いでいってくれる。そういった思いを込めて詠んだ句だ。しかし、この連句会にはつわものが多かった。私の句は残念ながら落選した。選ばれたのは、次の句である。
雀の雛のにぎやかな昼
雛という言葉を見ると、芭蕉の句「草の戸も住かはる代ぞ雛の家」が浮かんでくる。これは芭蕉が『奥の細道』の旅に出る直前に詠ったもの。そして私はこの句に入学式のイメージを感じた。若干の郷愁の如き色合いもあれど、私の句も芭蕉の句も今回の最終句も、どこか「次」を感じさせるような、心浮き立たせる句なのではないだろうか。
うん、来年の連句会も、きっと大盛況だ!
「六曲一双」夕顔の巻
| 渦といて夕顔の花ひらきけり | 夏 |
| きれいにかがむ浴衣の少女 | 夏 |
| 泥棒の夢のつづきはまたあした | 雑 |
| 株価暴落十四夜月 | 秋月 |
| 押し入れに鳴き明したるちちろ虫 | 秋 |
| まんぢう破る大丹波栗 | 秋 |
| ノーベル賞大和島根の四人衆 | 雑 |
| 白き息して恋が始まる | 冬恋 |
| アノ人が今日からこの子のパパになる | 雑恋 |
| クリオネ泳ぐ流氷の下 | 春 |
| 花弁が頭に落ちる新学期 | 春花 |
| 雀の雛のにぎやかな昼 | 春 |
- 記事作成:富田晃己(文芸創作学科 4年)
- 写真撮影:松野将太(文芸創作学科 1年)
- 竹田信弥(文芸創作学科 4年)